※noteではイラストも入っており読みやすいです
※個人名や地域は特定を避ける為に名称を変更しています。
「詳しく聞かせて下さい。」
「場所なんだけど、夜津波ダムだよ。」
「えっ、私さっき夜津波ダムの周りを探してきたところですよ?」
「周辺道路しか回ってないだろ?
そこじゃなくて、その周辺道路から入っていく林道の方だよ。」
「林道ですか、、、全然気づかなかったです。」
「まあ、普通に走ってたら入口なんて気づかないよな
で、最初に見たのは5日前の15時位だったかなぁ。」
「失踪した当日ですね。」
「その林道で唯一車が転回できる位の少し開けたスペースがあってそこにこの車が停まってた。
でもさ、その場所ってのは地元の連中が山菜採りなんかの時によく停めてる場所だから、大して気にも留めてなかったんだよ。
で、ついさっきその林道を通った時にもまだ停まってたから
おかしいなって、、、」
「なんでずっと停まってたと思われたんですか?」
「車の屋根やボンネットに葉っぱが溜まってたから、、」
「そうですか、間違いようがなさそうですね。
車内って見ました?」
「通り過ぎる時にチラっとね、誰も乗ってなかったけど
憶えてるのは、、、、
弁当箱みたいな物があったかな。
ほら、保温が出来る筒状のやつあんだろ、確かそれが見えたかな。」
「後ろの席はどうでした?」
「後ろのガラスが少し暗いタイプだったし
森の中で全体が薄暗いからよく見えなかったよ。」
「なるほどです。
どこからその林道にアクセス出来るのか教えてもらってもいいですか?」
「地図持ってないぞ?」
「スマホの地図があります
、、、、、、、
ここも圏外だ、、、。」
「じゃあ口頭で説明するよ。」
――――――――――――
男性たちは猟師をされている親子だった。
ある意味、山のプロだ。
林道への入口を丁寧に教えてもらい、念のため連絡先の交換をした。
猟師の親子にお礼を言い、一旦山を降りる。
下山しながら携帯の圏内に入ったら杉原に電話をした。
「お疲れ様。多分車が見つかったからさ、合流して1台で探しに行くぞ。」
「お疲れ様です、マジっすか?
でも多分ってどういう事ですか?」
「さっき猟師の人たちから有力情報もらってさ、山田さんの車が停まってる場所を教えてもらったんだよ。」
「えっ?猟師ですか?
よくそんな人達に話を聞けましたねぇ。
自分、どこに向かえばいいですか?」
「昨日話した夜津波ダムってあっただろ?
県道50号線でダムに向かう途中に夜津波温泉郷って歓迎アーチがあってさ、そこからちょっと走った所に無料駐車場があったからそこで合流しよう。」
「わかりました。てかそこまで行くととっくに18時過ぎますけどいいんですか?」
「所長には俺から電話しとく、所長と相談して山田さんの奥さんにも電話しとかないとかな、、、。」
「わかりました、結構距離あるんで急ぎ目で向かいます。」
「無理はしなくていいからさ、安全運転で来てよ。
あ、途中ホームセンターで長靴とフラッシュライトを2セット買ってきて、山の中に入ると思うから。」
「わかりました!」
私が待ち合わせの駐車場に着いたのは18時をとうに過ぎ、既に真っ暗だ。
杉原の方は到着までまだ30分ほどかかるらしい。
所長に電話をかける
「お疲れ様です、青野です」
「お疲れ様、東北県の調査お疲れ様でした。寒かったでしょ?」
「いや、実は車の情報が出ましてね。これから杉原と合流して確認に向かうんですよ。」
「もう18時過ぎてますよ?
その車の情報を依頼者に伝える形で纏めてもいいんじゃない?」
「いえ、それが、、、
目撃された場所っていうのが県境にある所謂自殺スポットってやつでして。」
「ええっ!?」
――――――――――――
「なるほど、そういう事なんですね、、、、。
わかりました、青野さん達はこのまま調査を続行して下さい。
依頼者さんには私の方からサービスでもう少し調査を続けると伝えておきます。
まだ確定した訳じゃないけど、これでもし亡くなってたとしたらうちの事務所設立以来初めてのケースですよ。
青野さん、うちの事務所に移籍して初めての調査ですよね?」
「まだ亡くなってるかどうかわからないんで、滅多な事言っちゃダメですよ。
確かに俺と杉原が移籍して初めての調査ですね。」
実は私、今の屋号と同じ「ブルーフィールドリサーチ」を自営で営んでいたのだが、同じく独立した大手探偵事務所時代の同僚(今の所長)からずっと調査員の育成をしてくれないかとオファーが来ていた。
大手探偵事務所時代から後輩の育成をしていた経験もあり
弟子の杉原と話し合ってブルーフィールドをたたみ
杉原と共に今の探偵事務所に移籍したのが12月の1日からだ。
「とにかく、所長は山田さんの奥さんに連絡してあげて下さい。
ただし、くれぐれも期待させる様な事は言わないで下さいね。
状況的にかなり厳しいと思うので。」
「わかりました、車が見つかった的な事はまだ伏せとくね。
青野さん達も気を付けて、終わったら連絡下さい。」
――――――――――――
車から降り、満点の星空を見上げながら深い深呼吸をする。
車内で暖まっていた肺に12月の東北県、山の冷たい空気を送り込み、頭と身体を引き締める。
下の方から山道を登ってくるヘッドライトの光がちらちら見え始めた。
ポケットから取り出した煙草に火を点け
もう一度、深く息を吸い込む。
神奈川 横浜の探偵 ブルーフィールドリサーチ
note 横浜 ブルーフィールドリサーチ
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