秋の日は釣瓶落とし。
茜色に染まる空の下、一台の白い軽バンが静かに佇んでいた。車内には二人の探偵の姿があった。彼らはとある浮気調査のため、対象者のマンション近くに張り込んでいる最中だった。
だが、対象者は一向に姿を現さない。
探偵A:「なぁ、この張り込みいつまで続くんだ? 昨日からほとんど車から出てないぞ」
探偵B:「そうだな。対象者はまだ家に籠ってるみたいだし、もうしばらくかかりそうだな」
探偵A:「この狭い車内でじっとしてるとさすがに体が鈍るな。運動不足解消にちょっと外でストレッチでもするか?」
探偵B:「いや、待て。対象者が出てきたらどうするんだ? それに外で動いてたら怪しまれるだろ」
探偵A:「そうか…。でもこのままじゃどんどん太っちまうぞ。この前健康診断でメタボ予備軍って言われたばっかりなのに」
探偵B:「なら、食事制限でもしたらどうだ? コンビニ弁当じゃなくてサラダチキンとかにすればいい」
探偵A:「サラダチキンか…。でもそれじゃ力が出ないだろ。調査に集中できない」
探偵B:「じゃあどうするんだ? 運動もダメ、食事制限もダメじゃ何もできないぞ」
探偵A:「うーん…。そうだ! 車内でできる運動があるじゃないか!」
探偵B:「車内でできる運動? なんだそれ?」
探偵A:「エア自転車こぎだ! これなら誰にも気づかれずに運動できるぞ!」
探偵B:「エア自転車こぎ…? そんなんで効果あるのか?」
探偵A:「あるに決まってるだろ! さあ、一緒にやろうぜ!」
二人の探偵は狭い車内でエア自転車こぎを始める。
探偵A:「ふぅ…、きつい…」息を切らしながら呟く。
探偵B:「な、なぁ…、これ…、本当に…、効果あるのか…?」同じく息を切らしながら質問する。
探偵A:「あ、あれ…? なんか…、視線を感じない?…」
二人の探偵は窓の外を見る。そこには対象者の女性が立っていた。
彼女はあきれた顔で二人を見ていた。
対象者の女性:「あの…、ちょっとお尋ねしたいんですけど…。あなたたち何してるんですか…?」
探偵A:(顔面蒼白)「え、えーと…、その…、これは…、新しい…、ストレッチ…?」
探偵B:(冷や汗をかきながら)「そ、そうです…。健康のために…」
対象者の女性:「そうですか…。でも、もう少し人目につかないところでやってもらえませんか…?」ため息混じりで吐き捨てた。
探偵A:「……すみません」
探偵B:「……はい」
夕闇が街を包み込む頃、対象者の女性はマンションへと消えていった。
二人の探偵は彼女の後ろ姿を見送りながら互いに顔を見合わせた。
今日の調査は失敗に終わった。
だが、彼らは張り込み中の暇つぶし以上の何かを得たような気がしていた。
それは健康に対する意識の芽生え、そして少しばかりの恥ずかしさだった。
明日からはもう少し真面目に調査に取り組もう。
二人の探偵はそう心に誓い、夜の帳の中へと車を走らせたのだった。
終わり
神奈川 横浜の探偵 ブルーフィールドリサーチ
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