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横浜の探偵ブルーフィールドリサーチ

祖母と扇風機

2024/08/30

軋む音と共に首を振る古い扇風機。

それは祖母の家の、縁側の片隅にいつもあった。


夏の日の記憶は、決まってこの扇風機と共にある。


幼い私は、扇風機の風が運ぶ涼しさよりも、その回る羽根に心を奪われていた。指先でそっと触れては、勢いよく回転する羽根に驚き、慌てて手を引っこめる。そんなことを繰り返しては、祖母に「危ないからやめなさい」と優しく叱られたものだ。


扇風機の周りには、いつも家族が集まっていた。

スイカを頬張りながら、夕涼みをする父。

団扇を手に、風を送ってくれる母。

そして、隣に座って静かに編み物を続ける祖母。

扇風機の風は、家族の穏やかな時間を包み込むように、ゆっくりと部屋を巡っていた。


ある夏の日、私は扇風機の前で昼寝をしてしまった。目が覚めると、祖母がそっと私にタオルケットをかけてくれていた。その時の、祖母の優しい笑顔と扇風機の柔らかな風は、今でも私の心に深く刻まれている。


時は流れ、祖母の家を訪れることも少なくなった。

それでも、あの古い扇風機は、変わらず縁側の片隅で静かに回っていた。その姿を見るたびに、私は幼い頃の記憶を鮮やかに思い出す。


扇風機は、ただ涼しさを運ぶだけの機械ではない。

それは、家族の絆、祖母の愛情、そして過ぎ去った夏の日の記憶を繋ぐ、大切な存在なのだ。


軋む音と共に首を振るたびに、扇風機は私に語りかける。「あの頃の思い出を忘れないで」と。



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