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横浜の探偵ブルーフィールドリサーチ

サブスク

「人生の軌跡」――それは人生のあらゆる瞬間を記録し、AI が自動で編集、加工してくれる画期的なサブスクリプションサービスだった。


健太はこのサービスの登場に心を躍らせた一人だった。

日々の些細な出来事から特別な記念日まで、何もかも記録され美しい映像として残る。面倒な編集作業は AI がこなし思い出はまるで映画のワンシーンのように輝きを増すのだ。


「これで大切な思い出を永遠に保存できる」

健太はそう確信し、迷わず「人生の軌跡」に加入した。



それから10年。



健太は仕事に邁進し充実した日々を送っていた。恋人との出会い、結婚、子供の誕生…人生のあらゆる場面が「人生の軌跡」に刻まれていく。


しかし、順風満帆だった健太の人生に暗雲が立ち込める。

起業した事業が失敗し多額の負債を抱えてしまったのだ。

生活を切り詰めるため健太は泣く泣く「人生の軌跡」を解約することにした。

解約の手続きは簡単だった。

ボタン一つで10年分の記録はサーバーから消去された。


「まあ、仕方ないか…」健太はそう自分に言い聞かせた。


しかし数日後、彼はある事実に気づく。

10年間の記憶が驚くほど曖昧になっているのだ。


妻との初めての旅行、子供の誕生日、昇進の喜び…「人生の軌跡」の映像で鮮明に思い出していたはずの出来事がぼんやりと霞んでいる。まるで、他人の人生を眺めているような感覚に陥る。


健太は慌てて古い写真や日記を探し出した。

しかし、そこには「人生の軌跡」に頼りきりだった10年間の記録はほとんど残っていなかった。


「一体…何が…」

健太は深い虚無感に襲われた。

10年分の記録を失っただけでなく、彼自身の記憶までもが失われていたのだ。いや、自ら強く記憶していなかったのだ。


「人生の軌跡」は確かに便利なサービスだった。

しかしそれは同時に、人々の記憶を委託するものでもあった。健太はそのことに気づくのが遅すぎた。


便利さと引き換えに彼は何を失ったのか。失った記憶はもう二度と取り戻せない。



私たちはテクノロジーの進化にどこまで身を委ねて良いのだろうか?


そして、本当に大切なものは一体何なのだろうか?



終わり



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