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横浜の探偵ブルーフィールドリサーチ

あいのかたち

  • 執筆者の写真: yokohamabluefieldr
    yokohamabluefieldr
  • 4月18日
  • 読了時間: 2分

noteにも載せています


谷川はしつこい女だった。

付き合ってたわけじゃない。ただ何度か体を重ねただけ。

家庭もあるし遊びのつもりだった。

でもあいつは違った。目が本気だった。


「奥さんの代わりになります。全部捨ててください」

笑って言った顔が気持ち悪くて――その日、全部終わりにした。


LINEも着信も無視。職場では冷たくあしらい遠ざけた。

やがて彼女は会社を辞めた。


しばらくすると嫁の様子がおかしくなった。

料理が妙に上手くなったし、話し方がどこか他人のようになった。


ある晩、寝ていた俺は気配で目を覚ました。

寝室のドアの前に誰かが立っている。

暗がりの中でそいつは言った。


「やっと一つになれたね」


翌朝、嫁がいなくなっていた。スマホも財布も置いたまま。

警察に行方不明届けを出して探している。

でも、見つからない。


それでも、毎日「彼女」は家にいる。

料理はするし洗濯もする、ベッドにも入ってくる。


俺は見ないようにしている。

髪がどこかおかしい。

肌の質感が違う。

首元に縫い目がある気がする。


けど、それを口に出すと彼女が怒るから。


「せっかく、あなたの“理想”になったのに」

そう言って鏡の前で笑う声は谷川だ。


けれど、顔は嫁だ。


混ざってる。

ぐちゃぐちゃに溶け合って、縫い合わされている。


俺は逃げようとした。

玄関のドアノブに触れた瞬間、スマホに通知が届いた。


「逃げたらバラバラにするよ?また一から縫うの、面倒なの」


指が震えて、ドアノブから力が抜けた。


もう逃げない。


だって彼女は俺の“全部”を知ってくれている。

血液型も、寝相も、裏切った数も。

俺の嘘も全部愛してくれてる。




愛は重ねて溶かして、ひとつになって、

最後は形になる。


嫁らしき女が言う

「ねえ、見せてあげようか?「本当の愛」の形を。

冷蔵庫の奥に大切にしまってあるから」




終わり



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