不倫相手を庇った男の人生
- yokohamabluefieldr
- 4月17日
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世の中のサレ側は皆、このような結末を望んでいるのかもしれません、、、
「どうして…どうしてなの…?」
リビングに響く夏美の泣き声。
テーブルにはスマホが無造作に置かれている。画面には俺と若い女が親密そうに寄り添う写真が表示されていた。
「夏美…これは…」
言葉が出ない。言い訳も弁解も全てが無意味に思えた。
「…健太、この女の人と…浮気してるの…?」
夏美の震える声が胸に突き刺さる。
「違うんだ、夏美!これは…その…」
咄嗟に出た言葉は信じられないほど見苦しいものだった。
「…彼女は、ただの仕事仲間で…相談に乗ってもらってただけなんだ!」
夏美は嘲笑うように顔を歪めた。
「相談?こんな時間に?ホテルで?……馬鹿にしないで!!」
テーブルを叩きつける音。
夏美の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちる。
「…ごめん、夏美。でも、彼女は悪くないんだ。俺が…俺が弱かっただけなんだ…」
その言葉は火に油を注ぐだけだった。
「悪くない…?健太、あなた…この女を庇うのね!?」
夏美の怒りは頂点に達し俺を激しく責め立てた。
しかし俺はひたすら浮気相手である愛を庇い続けた。
愛は仕事で悩んでいて、俺はただ相談に乗っていただけ。
家庭に居場所がない俺を愛は癒してくれた。
全ては俺の責任で愛は悪くない…。
夏美はそんな俺の言葉に絶望したように肩を落とした。
「…もういい。健太、あなたとはもう…無理よ」
離婚届を突きつけられ、俺は呆然と立ち尽くした。
数カ月後
俺は愛との同棲を始めた。夏美との離婚も成立し全てが新しいスタートを切った…はずだった。
愛との生活は想像していたものとは違っていた。
愛は夏美のように家事を完璧にこなすわけでもなく、いつも俺に甘えてばかり。仕事の悩みも以前ほど真剣に聞いてくれなくなった。
「健太、新しいバッグが欲しいな」
「健太、今度の週末旅行に行きたい」
愛の要求はエスカレートする一方。
俺は夏美と暮らしていた頃の安定した生活がどれほど恵まれていたかを思い知らされた。
さらに愛との関係は社内でも噂になり、俺はますます孤立していった。かつての同僚たちは俺を軽蔑の目で見るようになった。
ある日、愛が突然姿を消した。部屋には「ごめんね、健太。他に好きな人ができたの…それとこの家のお金、少し借りていくね」という書き置きと空っぽになった俺の預金通帳が残されていた。
愛は俺の貯金を全て持ち逃げしたのだ。
呆然と立ち尽くす俺の耳にけたたましい携帯の着信音が鳴り響いた。
「もしもし……」
力なく出た俺に人事部長の冷たい声が突き刺さる。
「君の部署での立場だが……今回の件も鑑みて、会社として看過できないと判断した。残念だが解雇させてもらうので自主退職の書類を提出してくれ」
あまりにも突然の宣告だった。
彼女を失い、金も失い、そして長年勤めてきた会社でのキャリアまでも一瞬にして奪われたのだ。
数年後
金は完全に底をつき、安アパートの家賃も滞るようになった。大家からは連日厳しい口調での催促がありついに部屋を追い出されることになった。
わずかな荷物だけを手に俺は真冬の寒空の下へと放り出された。
行く当てもなく夜は高架下で仮眠をとる日々。
昼間は日雇いの仕事を探して歩き回るが、これといった職歴もなく、年齢も中途半端な俺を雇ってくれるところは少なかった。たまに見つかるのは体力的にきつい単純作業ばかり。
かつての安定した生活とは比べ物にならない、その日暮らしの不安定な状況に心身ともに疲弊していった。
日に日に痩せこけ、身なりも構わなくなり、鏡に映る自分の姿はまるで別人のようだった。
かつての同僚や友人に連絡を取ろうとも思ったが、彼らに今の惨めな姿を見せる勇気も助けを求める声もあげられない。
もちろん実家の家族にも合わせる顔がない。
俺は社会から完全に孤立していた。
ある雪の降る夜
わずかな日銭を握りしめて安酒を買い公園のベンチでそれを呷った。
凍えるような寒さが身に染みる。
ぼんやりと夜空を見上げていると、ふと夏美の顔が浮かんだ。
彼女の優しさ、温かい手料理、穏やかな笑顔……。
俺が自ら壊してしまったかけがえのない日常。
なぜあんな愚かなことをしてしまったのだろう。
後悔の念が冷たいアルコールと共に腹の底からこみ上げてくる。
「…ごめんなさい……」
誰に届くでもない謝罪の言葉が白い息と共に虚しく夜空に消えていく。
寒さと空腹、そして深い絶望感に意識が遠のいていく。
このまま凍えてしまうのだろうか。
それも自業自得か……。
翌朝
公園の清掃員がベンチで冷たくなっている男を発見した。
ポケットには数枚の硬貨と結婚式で撮った古い写真が一枚だけ入っていたという。
不倫の代償はあまりにも大きい。
健太は誰にも知られることなく孤独の中でその惨めな人生の幕を閉じた。
彼が最も失ったものは金や仕事ではなく
人としての未来そのものだったのだ。
神奈川 横浜の探偵 ブルーフィールドリサーチ
note 横浜 ブルーフィールドリサーチ

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